第55章

田中尚哉が帰宅したとき、二階からかすかな物音がした。表情がすっと沈み、棚にしまっていた金属バットを手に取る。足音を殺し、ゆっくりと階段を上がった。

二階に着くと、音の出どころは大島莉理の書斎だった。

――莉理が戻ってきたのか?

バットを壁際に立てかけ、田中尚哉は扉を押し開ける。

大島莉理は机に向かって座っていた。何年も前に買った古いパソコンを、まだいじっている。

「そんな古いの、まだ触るのか? 使うなら新しいの買ってやる」

「いらない」

冷たく、拒むような声。

……まだ俺に怒ってるってわけか。

田中尚哉は鼻筋を指でなぞり、彼女の肩に両手を置いて宥めにかかる。

「たかが小さ...

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